「モン・・・またお前か!こらぁそこの三人待ちやがれえええ!!」
今、UTAU学園は昼休み。廊下は次の授業に備えて移動する生徒やら、談話する生徒やらが行き交っていつもどおりの平和な光景を生み出していた・・・がしかし、怒声をあげながら走る教師が平和な雰囲気をぶち壊していた。
そんな彼の名は重音テッド。眼鏡の奥で切れ長の目を獰猛に光らせながら前方を見る。
彼の10メートル先では、帽子を被った男を筆頭に三人の生徒が走っている。
「うわああああ!?ど、どうするんですか!凄い顔で先生が追ってきていますよ!?」
三人のうちの一人、比較的後ろのほうでテッドから逃げている片眼鏡の生徒・・・タヤが帽子の男に問いかける。その顔は半ば泣きそうだ。
しかし、そんなタヤに構わず帽子を被った黒縁眼鏡の生徒、餡知モンは笑っていた。
「あっはっは逃げろ逃げろ!!」
どうやら、彼らの様子からするにテッドから逃げているらしい。
タヤが泣きそうになり、モンが楽しそうに笑う中、三人のうちの最後の一人である角眼鏡の生徒・・・橙屋イモコだけは無表情ながらも先頭で逃げるモンの近くに距離を保ったまま走っていた。
(俺、何で一緒に逃げているんだっけ?)
イモコは無表情のままだが、心の中でいつものようにそう呟いた。しかし、この頃はもう慣れてしまい判りきったことなのであえて答えは求めなかった。
「こんにゃろが、毎度やってくれおって・・・俺から逃げ切れると思うな!?」
元々速い速度で駆け抜けていたテッドは更に加速した。
「うわあああああああ!! ごめんなさあああい!!」
タヤは更に加速しようとするが、元々穏やかな性格で、このような状況があまり好きでは無く無縁だったタヤには不慣れなことだったので足がもつれてしまった。
「ひゃぁ!?」
「た、タヤ!? うわっ!!」
足がもつれ、ぐらりとバランスを崩したタヤは自分の少し前を走っていたイモコの背中に倒れ掛かり、そしてイモコは近くを走っていたモンにぶつかり倒れてしまった。
「ちょ、重い!イモコどいてくれ!?」
「・・・タヤが上にいるんだが」
べちべちとモンが床を叩いて悲鳴をあげるが、真ん中に挟まったイモコは冷静だった。
「あうぅ・・・もう駄目です・・・」
「ああもう!うわ、先生来てる!!」
モンを一番下にして積み重なってしまった三人をテッドは易々と見逃さなかった。
何処から取り出したのか、大きな緑色の網を三人に向かって投げつけた。その場を動けなかった三人はいとも簡単に網に捕らえられてしまった。
「はっはっは捕まえたぞ!魔法使いをなめるなよ!?」
ひとしきり高笑いをした後、テッドは網で三人をずるずると何処かへ引き摺って行った。
テッドが三人を引き摺る様子を見ながら、廊下にいる生徒はひそひそと会話を始めた。
「まーたモン達捕まってるよ」
ポニーテールの女生徒が呆れる声を出す中、彼女と一緒に歩いている兎の耳の女生徒はため息をついた。
「これで何度目だっけ?懲りないよねぇ」
「もう結構やっているよね。この前はコトダマ先生の水晶玉に鳥もち付けていたし、またこの前はアヤコ先生の同人誌を誰だったかなあ・・・ユズ君の机に隠したんだっけ?よく飽きないわね」
「本当にねぇ・・・そうだルナ、昨日ね新しい歌を歌ったんだけど」
「えーいいなー」
また、彼女たちと違う集団ではこう話していた。
「また三人ともテッド先生に捕まったみたいだね、姉さん」
「うーん、毎回思うんだけどタヤ君って何であの二人と一緒にいるんだろう」
ある一人の女生徒はオレンジのかった金髪をいじりながら心から不思議そうに呟いた。
「えー?俺からすればイモコがモン達と一緒にいることが不思議だけどなあ」
「どうして?」
女生徒に聞かれてドキリとしながら、彼は返す。
「そ、そりゃ・・・男の俺からしてもいい声で気になってはいるけどさ、その・・・あまり喋らないからとっつきにくいし」
「そうね。確かにソラの言うとおりかもね。イモコ君って結構いい子だと思うけどなぁ・・・ますます三人が一緒なのが気になるわ」
「大体あいつらバラバラだよな・・・せいぜい接点たって眼鏡かけてるくらいじゃないかな?」
「そうだねえ・・・あ、ソラそろそろ時間じゃない?」
「あ、やべ。有難う姉さん!」
ソラと呼ばれた男子生徒は急いでどこかの教室に走っていった。
ひとしきり色々と喋っては皆、いつもどおりの日常に返るのだった。
+++後書?
長くなってしまったので、続きにします。UTAU学園とかその辺はもう適当です。
話では全くかすっていませんが、コハナちゃんは早々に退散している設定です。
そして、テッドを知ったきっかけがテッドPによるテッド発祥動画(あばばば)だからかうちの中ではテッドは眼鏡というのが定着しています。
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